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David Copperfield の翻訳(3)

David Copperfield の翻訳本を読み比べてみようと思いましたが、岩波文庫版は翻訳の質が低すぎて、比較の対象にならないので諦めました。
翻訳の質と書きましたが、これは翻訳そのものではなく日本語の問題です。日本語で読んでいて意味がつながらなかったり、日本語の語彙が不適切に使われたりしていて、そのたびに躓くので読み続ける気力がなくなってしまいました。
私自身の日本語もかなりおかしいので、こんなことを書くのはどうかとも思いますが、日本語の未来が気になります。アマゾンなどで岩波版の書評に否定的なことが書かれていないということは、読者の日本語感覚も翻訳者と同じレベルということですから、心配になります。本を読まない若者が増えたことが社会問題になっていますが、書評を書くほど本を読む人たちですらこの状況だとすれば、日本語はどうなるのでしょうか。

翻訳技術についていい例題だと思った箇所がありますので、それを書いて David Copperfield の読み比べは終わりにします。

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 MY mother had a sure foreboding at the second glance, that it was Miss Betsey. The setting sun was glowing on the strange lady, over the garden-fence, and she came walking up to the door with a fell rigidity of figure and composure of countenance that could have belonged to nobody else.
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----中野訳----------------------------------------
 もう一度念のために見直してみると、なぜか、てっきりミス・ベッチーだというような気がした。垣根越しの夕陽が、その見なれない女を赤々と照らし出している。女は、おそろしいほどぎくしゃくした歩きつき、そしてまた気持ちの悪いほど落ちつきはらった顔つきをして、戸口の方へ近づいてくる。もはやミス・ベッチーであることは疑いなかった。
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----石塚訳----------------------------------------
 もう一度見直してから、あれはミス・ベッツィだわ、と母さんには絶対確実な予感がした。この見慣れない女の人は、庭の生け垣ごしに西日を浴びながら、他の誰とも見紛いようのない、いかめしくて真四角に強ばった体つきと、落ち着きはらった顔つきとをして、ドアの方へと近づいてきた。
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"that could have belonged to nobody else" の訳し方で、中野訳と石塚訳の質の違いが明確に出ていると思います。
2番目の文は、母親がなぜその女を Miss Betsey だと思ったのか説明しています。女の様子を描いて、ああこれは Miss Betsey に違いないと話しを進めていく、中野訳にはそのうまさがあります。
次のパラグラフは、
When she reached the house, she gave another proof of her identity.
という文で始まります。この文と前のパラグラフのつながりを考えると、中野訳しか考えられないという気持ちになります。

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Comments

 私の場合は、原書か翻訳で読むとそれで終わってしまうのですが、こういう読み方は日本語の勉強にも英語の勉強にもなりますね。
 図書館で石塚訳をちょっと拝見。実は英語と格闘さんが評価されている方と勘違いして読んだのですが、日本語として素直に頭に入らない印象がありました。翻訳の評価に関して同感です。 
 11月10日の文中に、この記事をリンクさせていただきました。ありがとうございました。

Posted by: ぼくてき | November 10, 2005 at 10:23 AM

リンクしていただき恐縮です。
翻訳の手伝いをされたことがあるのですね。いい経験をされていると思います。

私自身の日本語は、長い会社員生活の影響でかなり変になっています。技術系の人たちの書く文章は、他人に理解してもらうという配慮に欠けているものが多く、いつの間にか自分でも同じような文章を書くようになってしまいました。英語だけでなく日本語ももっと勉強しなくてはと思いながら、時間ばかりが過ぎていきます。

Posted by: 英語と格闘 | November 10, 2005 at 10:11 PM

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